『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』三宅香帆

文芸オタクの私が教える バズる文章教室

格闘技が好きだ。唐突にアピールしましたが、正確に言うと、格闘技を観戦するのが好きなんです。最近の日本の総合格闘技では、朝倉兄弟の勢いがすごいですね。特に、兄・未来(みくる)による対戦相手の緻密な分析が見どころです。相手の弱点を分析して、作戦を立て、兄弟そろって連戦連勝。ということで、今日は「分析」つながりで、様々な作家を分析した一冊を紹介します。(強引)

『バズる文章教室』は、〝文才〟と言われる「すぐれた文章感覚」を、できるだけ平易な言葉を使って解説する本です。
主にブログやSNSなどで日常的に、自分の考えや体験などを発信している人に役立つようにと考えて作りましたが、
めったに文章を書かない人にも、これから文章を書いてみようと考えている人にも、あまり知られていない「読みたくなる文章のか
らくり」を楽しんでもらうことをめざしています。 

期待していました、期待し過ぎたかもしれません。

思っていた感じではなかったです。それは、僕が思っていた感じではないというだけで、本書がおもしろくないとか、役に立たないとかいうわけではありません。文章を書くときのテクニック集として、十分に価値のある本であることは間違い無いでしょう。

様々な作家の複数の著書を分析することで、その作家特有の文章術を抽出して解説する。そのようなコンセプトだと思っていたのです。ところが実際には、各作家の(特徴的とは言い難い)一節を抜き出して、それに対して分析・解説を加えています。

それも、小説家であってもエッセイが取り上げられているケースが多く、その作家らしさというのを感じにくい文章だという気がしました。ただし、本書のターゲットは小説を書く人ではなく、ウェブに何かを発信しようという人だと考えると、エッセイを題材に使うというのは有用であるようにも思います。

僕が当初思っていたコンセプトに当てはめるならば、小説も題材に使ってほしかったという気持ちもあります。「もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら」的なニュアンスですよね。しかし、これだと表現に終始してしまうので、文章の構成などを考えるには不適切でしょう。やはり、一般向けの文章術だと、本書のスタイルになりそうです。

ここで、例としてウェブメディア「milieu(ミリュー)」編集長、塩谷舞の文章術を参照してみます。彼女は元々ウェブライターをされていたので、ウェブで情報発信したい人にはちょうど良いかと思います。

milieu(ミリュー)
milieu(ミリュー)は、カルチャー・クリエイティブシーンを伝えるWebメディアです。(編集長:塩谷舞)

塩谷舞の文章術は「バズる組み立て」の章に入っています。

  • 譲歩逆説モデル
  • 塩谷舞の先読力
  • 今までの考えを、自分でくつがえす。
  • なるほどと感心したのに、もっといいことを教えてくれるの?

限られた時間の中、膨大な情報の中から、いかにして自分の文章を目に留めさせ、最後まで読み切らせることができるか。

ということで、彼女のnoteの文章が取り上げられています。

これから描きたいのは、「バズ」よりも「調和」|塩谷舞(mai shiotani)|note
「Webメディアで記事を書いてそれを読んでもらうには、どうすればいいのでしょう?」 ——発展途上で毎年トレンドが変わるWebメディアの世界では、私のような若輩者にもそんな質問がビュンビュン飛んでくる。飛んでくるものだから、私が経験してきた「偶然のバズ」をどうにかこうにかロジックに当てはめては、何百回も...

「Webメディアで記事を書いてそれを読んでもらうには、どうすればいいのでしょう?」

という問いで始まり、その回答が並べられています。その直後に「今日は真逆のことを書きます」という流れが組み立てられています。

でも、今日は真逆のことを書きます。これまでの発言を否定するつもりじゃないのですが、その先のことをずっと考えていたんですね。

本書ではここまでを「続きがどうしても気になる文章術」として解説しているのですが、noteの記事にアクセスしてみると、ここまでが無料の文章で、これ以降を読むには課金が発生するということがわかります。

本書の解説を読んだだけではピンとこなかったのですが、課金するなら確かにこの書き方だなと。読者に続きを読ませるテクニックとしては最適だと思う一方、milieuではこういう書き方はしないのだろうと思います。そうなると、塩谷舞の特有のスタイルというわけではなく、たまたまこういうテクニックを使っただけだと言えます。

(個人的に感じる塩谷舞らしさは、客観的に書かれるべき記事に主観を織り交ぜること、だと思っています)

47人の作家の文章を解説してありますから、上記のようなことをわかった上で読むと、とても価値のある本です。冒頭の僕のように別のコンセプトを期待して読むと、違和感を覚えてしまいます。

著者は相当な読書家のようですから、解説対象の人数を減らして濃度を高くすると良いのではないかとも思いますが、そうすると、ここまで一般受けしなかったでしょう。やはり、ライティングのテクニック集として読むのが正解のようです。

ですから、文章を書くときの様々なテクニックを知りたい人におすすめの一冊となっています。

そうではなくて、読書が好きだという人には、著者の三宅香帆さんの選書と書評がおもしろいので、そちらをチェックしてみてください。

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